『アンクル・サムはジョンブルを拉致殺害した。』 ちょっと物騒な言葉ですが、
1944年、英国ではブレトンウッズで戦後の国際金融・経済秩序を決めた会議はこのように語られました。
アンクル・サムはアメリカ、ジョンブルは当然イギリスです。
すでに経済的にはアメリカに完全に凌駕されていたイギリスが最後の抵抗を試みて破れたたのがブレトンウッズ会議でした。
イギリス側の利益を代表するのは有名な経済学者ケインズ、一方アメリカ側はホワイト国務次官補でした。この後の1946年の世界銀行やIMFの設立についてのアメリカとの交渉の1ヶ月後、過労がもとでケインズは心臓麻痺でなくなっています。
(一方のホワイトは隠れ共産主義者だったのが歴史の面白さです。)
一般の歴史では、『武器貸与法』はアメリカがイギリスを助けたように考えられていますが、戦争遂行のためギリギリの状態のイギリスに武器を高く売りつけ、
イギリスが大西洋に持つ権益を奪う目的がありました。
この時を境にポンド経済圏がドル経済圏に換骨奪胎されていきました。
つまり、米ドルがポンドに代わって世界の基軸通貨になったのです。
世界の基軸通貨は自然な流れでポンドからドルに代わったのではなく、アメリカの力と明確な政策によって代わったのです。
今、アメリカドルがだんだん下落し、中国や中東産油国、ロシアやEUまでが
ドル離れだといわれています。
一方、アメリカに次ぐ経済圏のユーロ加盟国の財政はしっかりしています。
(下図をご覧ください。クリックすると拡大します。)
次の基軸通貨は黙っていてもユーロが本命といわれているようです。
しかし、EUはアメリカに代わって世界の基軸通貨に成り上がろうとしているのでしょうか。
世界の経済は、『世界が作ってアメリカが買う。』ことで成り立っています。
中国や中東産油国にしても蓄積した富の源泉はアメリカドルです。
それぞれの国を含む地域で共同通貨を作る話はありますが、
どれくらい実現に近づいているのでしょうか。
ブレトンウッズ体制に代わる世界の基軸通貨を決める強力な体制と覇権を握る国や経済グループがまだ見えていないように感じます。
世界の政治体制は多極化していることは間違いないことです。
しかし、世界の基軸通貨がない、もしくは多極通貨の時代になったとすると、世界のお金の決済はどのように行われ、世界の経済はどのように回っていくのでしょうか。
それぞれの経済圏の通貨でしか自国の経済を計ることができなくなるとしたら、今の拡大した金融経済は一気に縮んで、経済的な『中世』になってしまうかもしれません。
確かに今はユーロの強さが目に付きます。しかし、自然にドルからユーロに世界の基軸通貨が代わっていくとはどうも考えにくいのです。
歴史をみると、そのときの対抗馬の本命が意外と簡単にこけてしまい、小さな勢力が世界の強国として新たに登場します。
(今川義元を倒した織田信長もその一例かもしれません。)
これから、どんな国・経済圏が登場するかよく見守って生きたいと考えています。
『通貨燃ゆ』谷口智彦著 日本経済新聞社を読んでの感想です。
わたしのつぶやきにお付き合いいただいた方に感謝します。
Kazuboy